第7章 環境適合性要求
HOSPO-RSM-V1-007 | Rev. 0.2 — Draft
Volume 1 — Range Safety Requirements
Chapter 7 — Environmental Compliance Requirements / 第7章 環境適合性要求
7.1 本章の目的
本章は、射場の建設、機体の搬入、推進剤の取扱い、および打上げ運用が周辺の自然環境や社会経済に与える影響を最小限に抑えるため、打上げ事業者および射場事業者(HOSPO)が満たすべき最上位の環境適合性要求を定める。
本要求は、環境影響評価法、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、騒音規制法、および米国FAA 14 CFR Part 420/450の環境要件に準拠して適用される。
参照 軌道上のデブリ軽減要求(25年ルール・上段パッシベーション等)は本章の対象外とする。軌道デブリ管理要求はVol.1 §1.7.01「打上げ後段階管理(軌道デブリ軽減)」に規定する。本章は地上・大気・海洋環境への影響を対象とする。
NOTE 環境影響評価法に基づく「環境影響評価書」の作成・提出はHOSPO(射場事業者)の義務である。打上げ事業者は、HOSPOが実施する環境影響評価に必要なデータ(機体諸元・推進剤量・騒音予測値等)を提供しなければならない。
7.2 騒音およびソニックブームの影響評価
ロケットのエンジン燃焼音および超音速飛行に伴う衝撃波(ソニックブーム)が、周辺の居住区域および生態系に与える影響を評価し、許容基準内に制御しなければならない。
7.2.1 地上騒音
打上げ事業者は、リフトオフ時の音響エネルギーを解析し、音響抑制システム(Water Deluge System等)の利用を前提とした最大騒音レベルが、周辺居住区域における騒音規制法に基づく許容基準を下回ることを証明しなければならない。
7.2.2 ソニックブーム
打上げ事業者は、超音速到達時の飛行高度および経路を解析し、地上建造物や船舶に対する衝撃波の被害リスクを排除した飛行コリドーを設定しなければならない。
参照 騒音・ソニックブーム評価の技術基準はVol.2 ENV-101「騒音・ソニックブーム評価標準」に従うこと。
7.3 大気、水質および土壌汚染の防止
推進剤の燃焼排気、漏洩、および設備稼働に伴う排出物が、大気、水質および土壌環境に与える影響を極限しなければならない。
7.3.1 大気環境
打上げ事業者は、燃焼ガスの成分分析を行い、有害物質(塩化水素等の腐食性・毒性ガス)の排出量が大気汚染防止法に基づく環境基準を満たしていることを証明しなければならない。
参照 大気環境評価はVol.2 ENV-101「騒音・ソニックブーム評価標準」(大気成分評価部分)およびENV-104「推進剤漏洩時の環境影響評価標準」を参照のこと。
7.3.2 水質および土壌の保護
推進剤充填施設および音響抑制用の排水システムは、燃料残渣等の未処理排水が周辺水域や土壌に流出しないよう、貯留・浄化機能を持たなければならない。
打上げ事業者およびHOSPOは、異常時(推進剤の大量漏洩等)における拡散防止策および浄化手順を確立しておかなければならない。
参照 推進剤漏洩時の環境影響評価はVol.2 ENV-104「推進剤漏洩時の環境影響評価標準」に従うこと。水質・土壌汚染防止に係る責任分界はVol.1 付録C「責任分担マトリクス」§6「環境保全」を参照のこと。
7.4 野生生物および海洋環境保護
北海道沿岸部の豊かな自然環境および海洋生態系への影響を最小限に抑えるため、以下の保護措置を講じなければならない。
7.4.1 野生生物の保護
✎ 修正 野生生物保護の責任主体(射場事業者)と打上げ事業者の遵守義務を明確に分離。
HOSPOは、渡り鳥の飛来地・営巣期等の生態系サイクルを評価し、必要に応じて打上げ事業者に対して特定の季節や時間帯における打上げウィンドウ制限(ウィンドウ・クロージャー)を通達する。打上げ事業者はこの制約を順守しなければならない。
参照 野生生物保護・ウィンドウ制限の技術基準はVol.2 ENV-103「野生生物保護・ウィンドウ制限基準」に従うこと。
7.4.2 投棄物および海洋環境保護
打上げ事業者は、第1段機体やフェアリングの投棄・落下予定海域(Drop Zone)について、海洋哺乳類の生息地や漁業活動エリアへの影響を最小化するよう設定しなければならない。
海洋環境への長期的な影響を防ぐため、計画的な投棄物は以下のいずれかを満たさなければならない。
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安全に沈降する設計(海底への堆積が環境基準の範囲内であることを証明すること)
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回収船によって速やかに回収し、Marine Debris(海洋ごみ)の発生を防止すること
✎ 修正 「海洋デブリ」という表現は宇宙用語の「軌道デブリ(Orbital Debris)」との混同を招くため、本章では「Marine Debris(海洋ごみ)」と表記する。
参照 投棄物落下海域・回収管理の技術基準はVol.2 ENV-102「投棄物落下海域・回収管理標準」に従うこと。
7.5 継続的環境モニタリング
✎ 修正 旧§7.5を「継続的モニタリング」(§7.5)と「原状回復措置」(§7.6)に分割。
HOSPOは、定期的な水質・土壌検査および打上げ時の騒音測定等を含む継続的な環境モニタリングプログラムを実施する。
打上げ事業者は、このモニタリング活動に対して以下の協力義務を負う。
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打上げ当日の騒音・排気データの収集および提供
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推進剤取扱い記録等、環境影響評価に必要なデータの開示
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HOSPOが実施する現地立ち入り調査への協力
参照 環境モニタリングの技術基準はVol.2 ENV-105「環境影響継続モニタリングおよび報告基準」に従うこと。
7.6 原状回復措置
パッド火災、推進剤の大量漏洩、または射場周辺への機体デブリ落下(Mishap)が発生した場合、打上げ事業者はHOSPOと連携し、速やかにサイトの原状回復および汚染除去(浄化)措置を実施しなければならない。
原状回復措置には以下を含む。
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汚染土壌の採取・分析および必要に応じた浄化・入替
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推進剤残液の回収・無害化処理
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機体デブリの回収および廃棄
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浄化完了の確認検査および行政機関への報告
参照 原状回復・浄化の技術基準はVol.2 ENV-106「サイト原状回復・浄化基準」に従うこと。Mishap発生時の緊急対応はVol.3 EM-102「火災・毒性漏洩時の消火・中和手順」と連携して実施すること。
付録A — 環境適合性要求・適合手段マトリクス
✎ 修正 旧§7.6のマトリクスを付録Aとして再配置。大気評価のENV-101参照を追加。
| 規定項目 | 要求内容(What) | 提出・証明要件 | 適用される技術標準 |
| 騒音・ソニックブーム | 騒音および衝撃波による居住区・インフラへの影響を基準内に収めること。 | 音響解析結果、および地上・洋上における衝撃波到達エリアの算出レポートの提出。 | ENV-101 騒音・ソニックブーム評価標準 |
| 大気環境評価 | 有害燃焼ガスの排出量が大気汚染防止法基準を満たすこと。 | 燃焼ガス成分の環境評価レポートの提出。 | ENV-101 騒音・ソニックブーム評価標準 ENV-104 推進剤漏洩時の環境影響評価標準 |
| 水質・土壌汚染防止 | 有害な燃焼排気や漏洩推進剤による環境汚染を防止すること。 | 漏洩発生時の拡散防止・浄化プロトコルの提出。 | ENV-104 推進剤漏洩時の環境影響評価標準 |
| 野生生物保護・ ウィンドウ制約 | 渡り鳥等の生態系サイクルに配慮した打上げ計画を策定すること。 | HOSPOが提示する生物保護制約(季節・時間制限)への適合を反映した打上げスケジュールの提出。 | ENV-103 野生生物保護・ウィンドウ制限基準 |
| 投棄物および 海洋環境保護 | 投棄物によるMarine Debris発生を防ぎ、回収または安全沈降を確実に行うこと。 | 分離物の材質管理計画、落下海域の設定、および回収(または確実な沈降)運用計画の提出。 | ENV-102 投棄物落下海域・回収管理標準 |
| 環境モニタリングへの協力 | 射場周辺の継続的な環境負荷の監視を可能にすること。 | 打上げ当日の騒音等データ収集、および事後の環境影響評価への協力。 | ENV-105 環境影響継続モニタリングおよび報告基準 |
| サイト原状回復・浄化 | 事故や漏洩時における自然環境へのダメージを速やかに回復すること。 | 異常事態発生時における汚染土壌の浄化やデブリ回収等の原状回復手順の提出。 | ENV-106 サイト原状回復・浄化基準 |