第1章 総則

HOSPO

北海道スペースポート

HOSPO-RSM-V1-001

Volume 1 — Range Safety Requirements

射場安全要求

Chapter 1 — General Provisions / 第1章 総則

版数 Rev. 0.2 — Draft
発行日 2025年〇〇月〇〇日
作成 HOSPO Safety Department
承認 (承認者氏名・役職)
適用 全利用事業者・HOSPO役職員

1.1 本文書の目的

HOSPOは、安全かつ持続可能で、国内外の事業者に開かれた商業宇宙港を提供するため、本マニュアルを制定し運用する。本マニュアルの目的は以下のとおりである。

  1. 公衆、作業員および財産の保護

本マニュアルの最も重要な目的は、ロケット打上げ、機体回収、推進剤取扱いその他の宇宙港運用に伴うハザードから、一般公衆、射場作業員、利用事業者および周辺の財産を保護することである。

HOSPOは、利用者に対して共通の安全要求事項を適用し、許容できないリスクを排除するとともに、リスクをALARP(As Low As Reasonably Practicable)の原則に従い合理的に達成可能な限り低減することを求める。

NOTE ALARP原則とは、リスクを合理的に達成可能な範囲で最小化するという安全管理の基本原則であり、FAA Part 450、RCC 321-23およびEsrange Safety Manualにおいても採用されている。

  1. 打上げ事業者の法令適合支援

宇宙活動法に基づく打上げ許可の取得にあたり、打上げ事業者は打上げおよび落下区域に関する安全性を国へ説明しなければならない。

HOSPOは、本マニュアルおよび関連技術標準を通じて、射場固有の制約条件、環境条件、安全解析手法および運用要件を明確化し、利用事業者による円滑な安全証明および許認可取得を支援する。

  1. 地域社会および関係機関に対する説明責任

宇宙港の継続的な運営には、地域住民、自治体、漁業関係者、関係行政機関およびその他のステークホルダーとの信頼関係が不可欠である。

HOSPOは、本マニュアルに基づき、透明性の高い安全管理および環境保全を実施するとともに、その内容を客観的に説明できる仕組みを維持することで、社会的信頼の確保に努める。

1.2 法令および国際標準との関係

HOSPOは、日本国の法令を遵守するとともに、国際的に認知された宇宙輸送分野の安全基準を参照しながら運営される商業宇宙港である。本マニュアルは、以下の法令、規則および技術基準との整合を考慮して策定されている。

1.2.1 適用法令

  • 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法、平成28年法律第76号)

  • 火薬類取締法

  • 高圧ガス保安法

  • 消防法

  • 航空法

  • 海上交通安全法および関連法令

1.2.2 参照する国際規格・技術標準

  • 米国連邦航空局(FAA)14 CFR Part 420 — Licenses for Launch Sites

  • 米国連邦航空局(FAA)14 CFR Part 450 — Launch and Reentry License Requirements

  • 射場司令官評議会(RCC)標準 RCC 319 — Flight Termination System Commonality Standard

  • 射場司令官評議会(RCC)標準 RCC 321-23 — Common Risk Criteria Standards for National Test Ranges

  • NASA NPR 8715.5A — Range Safety Program

  • Esrange Space Center Safety Manual(ESM v10, SSC, 2024年版)

  • ISO 24113 — Space Systems: Space Debris Mitigation Requirements

  • IADC Space Debris Mitigation Guidelines

NOTE 法令適合の詳細な対応関係は、本Volume 1 付録B「法令適合トレーサビリティマトリクス」を参照のこと。

1.2.3 国際標準を参照する理由

  1. 国際的な利用容易性の確保

FAA規則およびRCC標準は、商業宇宙輸送分野において広く参照される安全基準である。これらとの整合を図ることにより、海外事業者は既存の安全解析や運用実績を活用しやすくなり、HOSPOを利用する際の追加的負担を低減できる。

  1. 国内制度の補完

日本の宇宙活動法は主として打上げ事業者に対する規制を対象としており、商業宇宙港の運営基準や利用ルールについては必ずしも詳細に規定されていない。HOSPOは、国際的な先行事例を参照しながら、宇宙港運営者として必要な安全要求および運用基準を自主的に整備する。

  1. 実務的な安全基準の提供

高位の安全要求のみでは、利用事業者ごとに解釈が異なり、安全証明や審査において不要な不確実性が生じる可能性がある。HOSPOは、本マニュアルおよび関連する技術標準を通じて、具体的かつ再現可能な適合手段を提示し、安全証明の効率化および審査の透明性向上を図る。

1.3 適用範囲

本マニュアルは、HOSPOが管理する施設、設備、空域および海域を利用するすべての組織および個人に適用される。適用対象には以下を含む。

  • 打上げ事業者

  • 再使用機体運用事業者(RLV Operator)

  • オービタル機体運用事業者

  • サブオービタル機体運用事業者

  • ペイロード事業者

  • 回収事業者

  • 請負事業者および協力会社

  • HOSPOの役職員

  • その他、HOSPOが指定する関係者

利用者は、本マニュアル、関連する技術標準、運用規程およびその他のHOSPO発行文書を遵守しなければならない。

1.4 宇宙港の概要

北海道スペースポート(以下、HOSPO)は、国内外の複数の民間打上げ事業者に対し、機体の搬入、組立、推進剤の充填、および軌道への打上げを支援する包括的なインフラを提供する。打上げ運用の統合管理から安全管制(Range Safety)までをHOSPOが統括する。

1.4.1 対象とするロケット

HOSPOにおいて打上げ可能なロケットは、最大離陸重量200トンの多段式液体ロケットおよび最大離陸重量100トンの多段式固体ロケットである。主な推進剤として液体メタン(LCH4)および液体酸素(LOX)、コンポジット推進薬を使用する機体を想定して各種安全解析および適合性調査を実施している。

NOTE 上記の機体スペックは現時点における設計基準値であり、個別ミッションの機体は射場利用手続(Chapter 3)に基づく安全審査により適合性が確認される。

1.4.2 射場の適合性

本射場は、東側および南側に広大な太平洋が広がっている。この地理的特性により、極軌道(Polar Orbit)や太陽同期軌道(SSO)、さらには中傾斜角軌道など、幅広いミッションに対して人口密集地の上空を通過しない安全な飛行コリドー(Flight Corridor)の確保が可能である。万が一の飛行中断時においても、期待死傷者数(Ec)を極めて低い水準に抑えることができる理想的な立地条件を備えている。

1.5 射場事業者情報

項目 詳細情報
申請法人名 〇〇〇〇〇〇〇〇
主たる所在地 〒089-2113 北海道広尾郡大樹町
設立年月日 YYYY年MM月DD日
代表者氏名 代表取締役社長 〇〇 〇〇
担当窓口 [氏名・役職] / [電話番号] / [Email]
事業内容 宇宙港の設計、建設、運用、および関連するコンサルティング業務
資本関係・株主構成 〇〇〇〇
他機関からの許認可等 航空法に基づく制限表面の特例承認、電波法に基づく無線局免許(取得予定)

1.6 文書体系

1.6.1 文書体系の目的と基本構造

HOSPOは、宇宙港で実施されるすべての安全、運用、環境、およびセキュリティ活動にわたり、一貫性、追跡可能性、および拡張性を確保するため、4階層の文書体系を採用する。

本体系は、安全目標(要求)と、その実装手法、運用手順、および適合性評価基準を明確に分離する。この構造により、HOSPOは最上位の要求事項を安定的に維持しつつ、技術や規制の発展に合わせて技術標準や運用手順を柔軟に進化させることが可能となる。

Vol. 名称 機能 内容の性格
Vol.1 射場安全要求 Requirements (What) 遵守すべき絶対的な目標値・要求事項。解析手法は原則規定しない。
Vol.2 技術標準 Means of Compliance (How) Vol.1要求への「承認された適合手段」。解析手法・モデル・データ形式等を規定。
Vol.3 運用規程 Operational Implementation 打上げ当日・日常運用のプロトコル、GO/NO-GO判定基準等。
Vol.4 適合性評価要領 Compliance Assessment HOSPO審査官が提出物を評価・承認するための内部ガイドライン。

Vol.1 — 射場安全要求(Range Safety Requirements)

Volume 1は、HOSPOのすべての利用者に適用される「必須要求事項(What)」を規定する。これらの要求は、達成されなければならない安全、運用、環境、セキュリティ、およびガバナンスの最終目標を定義する(例:公衆リスク限界値、危険作業統制、環境保護義務等)。Volume 1は「何を達成すべきか」を定義するが、原則として特定の解析手法、モデル、または実装アプローチを強制しない。すべての利用者は、Volume 1への適合が義務付けられる。

Vol.2 — 技術標準(Technical Standards)

Volume 2は、Volume 1で確立された要求事項に対する適合を証明するために、HOSPOが承認した「具体的な技術手法(How)」を提供する。技術標準は以下を定義する。

  • 解析手法およびエンジニアリングモデル

  • データ入力要件および検証要件

  • 性能基準および文書化フォーマット(例:公衆リスク評価手法、デブリ生成モデル、AFTS適合要件等)

適用される技術標準への準拠は、Volume 1に対する「承認された適合手段(Accepted Means of Compliance)」と見なされる。

Vol.3 — 運用規程(Operations Manuals)

Volume 3は、打上げキャンペーン、危険作業、カウントダウン、緊急時対応、および飛行後活動等を実施するための「運用手順(Operations)」を規定する。運用規程は以下を定義する。

  • 役割と責任、および指揮命令系統

  • 通信プロトコルおよび運用上の意思決定権限

  • GO/NO-GO判定基準(Launch Rules等)

  • 海空域監視手順、緊急対応、および外部機関との連携要領

Vol.4 — 適合性評価要領(Compliance Guides)

Volume 4は、利用者の活動を審査、監査、および承認する責任を負うHOSPOの担当者(審査官等)に向けた「評価ガイドライン(Review Guidelines)」である。審査要領は以下を確立する。

  • 審査手法および受容基準(Acceptance Criteria)

  • 監査手順および検証チェックリスト

  • 制限逸脱(Waiver)の評価手順

これらの文書は、すべてのプログラムおよび利用者に対して安全審査が一貫して透明に行われることを保証する内部文書であり、通常、利用者に直接的な要求を課すものではない。

1.6.2 代替適合手段と等価安全性

利用者は、Volume 2またはVolume 3で指定されたものとは異なる代替の手法、モデル、ツール、または手順を提案することができる。当該代替手段は、HOSPOの規定と同等以上の安全水準であること(等価安全性:Equivalent Level of Safety = ELOS)を証明しなければならず、実装前にHOSPOの明示的な承認を得なければならない。等価安全性を立証する責任は、提案する利用者が負う。

NOTE 代替適合手段の提案・審査手続きの詳細は、Chapter 2「システム安全(SMS要求)」§2.2「制限逸脱(Waiver)の許可要件」およびVol.4「適合性評価要領」CRG-05を参照のこと。

1.6.3 文書間の優先順位

文書間で記載内容に矛盾または不一致が生じた場合は、以下の優先順位に従って適用される。

  1. 適用される法令および規制

  2. Volume 1 — 射場安全要求

  3. Volume 2 — 技術標準

  4. Volume 3 — 運用規程

  5. Volume 4 — 適合性評価要領

下位レベルの文書に含まれるいかなる条項も、正式な制限逸脱(Waiver)プロセスを通じて明示的に承認されない限り、上位レベルの文書によって確立された要求事項を免除または軽減することはできない。

NOTE HOSPOと利用事業者間の契約書または個別協定に記載された条件は、本マニュアルと矛盾する場合、上記優先順位第1位(法令)に次ぐ位置付けとして別途整理される。詳細は利用契約書を参照のこと。

付録A — 適用法令・規格一覧 (Appendix A — Applicable Laws & Regulations)

No. 法令・規格名称 発行機関 主な適用分野
1 宇宙活動法(平成28年法律第76号) 内閣府 打上げ許可・適合認定
2 火薬類取締法 経済産業省 推進剤・火工品管理
3 高圧ガス保安法 経済産業省 高圧ガス設備
4 消防法 総務省 防火・危険物管理
5 航空法 国土交通省 空域調整・NOTAM
6 海上交通安全法・港則法 国土交通省・海保 航行警報・海上クリアランス
7 14 CFR Part 420 (FAA) FAA (米国) 射場ライセンス
8 14 CFR Part 450 (FAA) FAA (米国) 飛行安全・打上げライセンス
9 RCC 319 (FTS) RCC (米国) 飛行終端システム
10 RCC 321-23 (Common Risk Criteria) RCC (米国) 公衆リスク評価
11 NASA NPR 8715.5A NASA (米国) 射場安全プログラム
12 Esrange Safety Manual v10 SSC (スウェーデン) 運用・地域共創参考
13 ISO 24113 ISO 軌道デブリ軽減
14 IADC Space Debris Mitigation Guidelines IADC 軌道デブリ軽減
15 ITAR (22 CFR §120–130) / EAR (15 CFR §730) US DoS/DoC 輸出管理・外国人利用者

付録B — 法令適合トレーサビリティマトリクス (Appendix B — Regulatory Traceability Matrix)

以下のマトリクスは、宇宙活動法に基づく打上げ施設適合認定(§12)の要求項目と、本マニュアルの各章・各Volumeとの対応関係を示す。詳細な対応関係は本付録を随時更新する。

No. 宇宙活動法§12 適合認定要求 HOSPO対応章・文書 備考
1 公衆安全の確保 Vol.1 Chapter 4(飛行安全要求) Ec・IR基準
2 危険物の適切な管理 Vol.1 Chapter 5(地上安全要求) 推進剤・火工品
3 事故発生時の対応 Vol.1 Chapter 10 / Vol.3 EM章 緊急事態管理
4 安全管理体制 Vol.1 Chapter 2(システム安全) SMS・RSO
5 環境への配慮 Vol.1 Chapter 7(環境適合性要求) 大気・海洋・デブリ
(随時追加)

NOTE 本マトリクスは内閣府への適合認定申請書類の一部として提出されることを想定している。申請時には最新版を使用すること。