第6章 再使用機体運用要求
HOSPO-RSM-V1-006 | Rev. 0.2 — Draft
Volume 1 — Range Safety Requirements
Chapter 6 — RLV-Specific Requirements / 第6章 再使用機体運用要求
6.1 本章の目的
本章は、再使用型宇宙輸送機(RLV: Reusable Launch Vehicle)の第1段、フェアリング、または軌道上からの帰還機体が、射場(RTLS: Return to Launch Site)または洋上回収プラットフォームへ帰還・着陸するフェーズにおいて、一般公衆、射場作業員、および射場設備を保護するための追加的な最上位要求を定める。
本章の要求は、Chapter 4(飛行安全要求)およびChapter 5(地上安全要求)を補完するものであり、RLV運用に固有のハザードに対して適用される。
参照 本章の各要求と技術的適合手段(Vol.2)との対応は、本章付録A「RLV要求・適合手段マトリクス」を参照のこと。
6.2 用語の定義(本章固有)
★ 追加 RTLS等の略語が本文中で初出するため、用語定義節を新設。
| 用語 | 定義 |
| RLV (Reusable Launch Vehicle) | 第1段機体、フェアリング、またはその他の構成品が射場または洋上プラットフォームに帰還・着陸し、再整備後に再飛行可能な宇宙輸送機。 |
| RTLS (Return to Launch Site) | 打上げ後に機体が出発した射場へ帰還・着陸する運用形態。陸上着陸(VTVL: Vertical Takeoff Vertical Landing)を含む。 |
| ASDS (Autonomous Spaceport Drone Ship) | 洋上に展開する自律型無人着陸プラットフォーム。機体が射場への帰還が困難な場合に使用する。 |
| 安全化(Safing) | 着陸後の機体に残存する推進剤・高圧ガス・火工品等のエネルギーを無力化し、安全な状態へ移行させるための作業手順。 |
| 着陸警戒区域 (Landing Hazard Area) | 帰還機体の分散および故障モードを考慮して設定される、着陸地点周辺の立入制限区域。帰還フェーズ開始前に非必須人員・公衆を排除しなければならない。 |
| Ditch Area | RTLS着陸シーケンスが正常に完了しない場合に、機体を射場インフラへの直撃を回避して誘導する、事前指定された海上投棄エリア。Phase 2のOSP提出時にHOSPOの承認を得ること。 |
| 安全隔離半径 (Safety Standoff Radius) | 着陸後の機体から、安全化完了までの間、人員の接近を禁止する半径。RLV-102に基づき打上げ事業者が算出し、HOSPOが承認する。 |
6.3 帰還・着陸時の公衆リスクおよび飛行安全
打上げ事業者は、機体の帰還・着陸フェーズに伴うハザード(運動エネルギー・残存推進剤・デブリ飛散等)を特定し、以下の安全基準を満たさなければならない。
6.3.1 リスクの合算と許容限界
機体の帰還・着陸フェーズにおける公衆リスクは、Chapter 4(§4.3)で規定されたミッション全体の許容リスク基準(期待死傷者数Ec・個人リスクIR等)に合算され、その総和が基準値内に収まることを証明しなければならない。
重要 帰還フェーズのリスクを打上げフェーズと分離して評価することは認めない。ミッション全体のEc・IRが合算で許容基準以下であることをFAA §450.101に従って証明すること。
6.3.2 着陸警戒区域の設定
打上げ事業者は、帰還する機体の分散(Dispersions)および想定される故障モード(エンジン再点火不良・推力偏向喪失等)を考慮し、着陸地点周辺に着陸警戒区域を設定しなければならない。
帰還フェーズ開始前に、以下の条件が成立していることをHOSPOのRSOへ報告・証明しなければならない。
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着陸警戒区域内のすべての非必須人員および一般公衆が完全に排除(Clear)されていること。
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海上着陸の場合、海上警戒区域内に船舶が存在しないことをAIS/VMSまたは目視により確認していること。
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クリアランス確認完了をRSOが承認していること。
参照 着陸警戒区域の算出基準はVol.2 RLV-101「着陸リスク評価標準」およびFS-702「ハザードエリア設定標準」に従うこと。
6.4 帰還フェーズの飛行中断および緊急回避
帰還中の機体が予定された飛行コリドーを逸脱し、公衆や指定重要インフラに危害を及ぼす恐れがある場合、打上げ事業者は確実なハザード封じ込め措置を講じなければならない。
6.4.1 自律型飛行終端または推力停止
帰還経路上のILL(落下限界線)またはFSL(飛行安全限界線)を突破する軌道逸脱が検知された場合、機体は自律的に飛行中断(AFTS作動、または推力の完全停止による空力破壊等)を実行し、ハザードを事前承認された制限区域内に封じ込めなければならない。
参照 帰還フェーズのFSL/ILL設定はVol.2 RLV-104「自律着陸誘導システム安全性証明基準」に従うこと。打上げフェーズと帰還フェーズでFSL/ILLが異なる場合、両フェーズの境界条件を明確に定義すること。
6.4.2 緊急回避ロジック(Ditch Area)
RTLS(射場への陸上帰還)時において、着陸シーケンスの最終ゲート(高度・速度・姿勢の許容ウィンドウ)を満たさない致命的な異常が発生した場合、機体は自動的に射場インフラへの直撃を回避し、事前指定されたDitch Area(海上投棄エリア)へダイバートする機能を備えなければならない。
Ditch Areaに関する以下の事項をPhase 2のOSP提出時にHOSPOへ提出し、承認を得ること。
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Ditch Areaの位置・範囲・設定根拠(HOSPOが承認するまで運用を開始してはならない)。
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最終ゲート条件(高度・速度・姿勢の許容ウィンドウ)の定義。
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ゲート条件未達時のダイバート開始ロジックおよび誘導アルゴリズムの概要。
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Ditch Area内の公衆リスク評価(Ec・IR)がChapter 4の許容基準以下であることの証明。
参照 Ditch Area設定および誘導ロジックの技術基準はVol.2 RLV-104「自律着陸誘導システム安全性証明基準」に従うこと。
6.5 着陸後の安全化運用
着陸直後の機体は、未燃焼の推進剤、高圧ガス、および作動状態の火工品を内包する極めて危険な状態にある。着陸後の安全化(Safing)は、Chapter 5(地上安全要求)の危険作業に準じた最高レベルの統制下で実施しなければならない。
6.5.1 安全化(Safing)手順の確立と承認
打上げ事業者は、着陸後の機体を安全な状態へ移行させるための安全化手順(Safing Procedure)を確立し、HOSPOの承認を得なければならない。安全化手順には以下を含むこと。
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推進剤のベント(排出)および残存圧力の解放手順
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飛行中断システム(FTS)の無力化(Safe状態への移行)手順
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遠隔操作による初期安全化の実施条件と手順
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安全化完了(Safing Complete)の宣言基準と宣言権限者
参照 安全化手順の詳細技術基準はVol.2 RLV-102「大気圏再突入安全標準」および「着陸後安全化基準」に従うこと。安全隔離半径の算出方法はVol.2 RLV-101「着陸リスク評価標準」を参照のこと。
6.5.2 アプローチ統制
打上げ事業者の安全統括責任者(Launch Safety Authority)が「安全化完了(Safing Complete)」を宣言し、HOSPOのRSOがアクセス許可を発出するまでの間、いかなる人員(回収チームを含む)も着陸した機体および安全隔離半径内に接近してはならない。
参照 安全隔離半径はVol.2 RLV-102に基づき打上げ事業者が算出し、Phase 2のOSP提出時にHOSPOが承認する。アクセス許可の発出手順はVol.3 OPS-106「警戒区域監視・クリアランス判定」に従うこと。
6.6 洋上回収プラットフォーム要件
HOSPO東方・南方の太平洋上においてASDS等の海上プラットフォームを用いた機体回収を実施する場合、以下の要件を適用する。
★ 追加 洋上回収プラットフォームの運用は、海上交通安全法・港則法に加え、海洋汚染防止法(推進剤漏洩・廃液管理)が適用される。運用海域が日本のEEZ内である場合、事前に国土交通省・海上保安庁との調整を完了していること。
6.6.1 着陸時の無人化と退避
機体の最終アプローチおよび着陸時において、回収プラットフォーム上は完全に無人でなければならない。回収支援船および支援要員は、爆発やデブリ飛散の影響が及ばない海上警戒区域の外側で待機しなければならない。
海上警戒区域の設定根拠および支援船の退避距離をVol.2 RLV-103「洋上回収プラットフォーム安全基準」に従ってOSPに記載し、HOSPOの承認を得ること。
6.6.2 洋上安全化と移乗基準
着陸完了後、回収チームがプラットフォームへ移乗(Boarding)し機体の固定(Securing)作業を開始するためには、以下の条件がすべて成立していることを証明しなければならない。
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遠隔操作による機体の初期安全化(推進剤ベント等)が完了していること。
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プラットフォーム上および機体周辺の有毒ガス濃度が安全基準以下であることをセンサーにより確認していること。
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打上げ事業者の安全統括責任者が移乗開始を承認していること。
参照 移乗基準の詳細技術要件はVol.2 RLV-103「洋上回収プラットフォーム安全基準」に従うこと。
付録A — RLV要求・適合手段マトリクス
✎ 修正 旧§6.6のマトリクスを付録Aとして再配置。文書番号をv2.0体系に統一(FS-302→FS-502、FS-402→FS-702)。OPS番号をVol.3体系に修正。
| 規定項目 | 要求内容(What) | 提出・証明要件 | 適用される技術標準・運用規程 |
| 帰還時の 公衆リスク評価 | 帰還フェーズのリスクをミッション全体に統合し、許容基準を満たすこと。 | 帰還・着陸時の分散軌道および故障モードを加味したEc/IR解析結果の提出。 | FS-502 公衆リスク評価手法 RLV-101 着陸リスク評価標準 |
| 着陸警戒区域の クリアランス | 着陸地点周辺の非必須人員および公衆を完全に排除すること。 | 着陸警戒区域の算出根拠、および当日のクリアランス確認プロセスの提出。 | FS-702 ハザードエリア設定標準 RLV-101 着陸リスク評価標準 OPS-106 警戒区域監視・クリアランス判定 |
| Ditch Area設定 および緊急回避ロジック | 射場への直撃を防ぐため、異常時は安全な海域へ機体を誘導すること。 | Ditch Areaの位置・範囲・設定根拠、最終ゲート条件、およびダイバートロジックの提出(Phase 2承認必須)。 | RLV-104 自律着陸誘導システム安全性証明基準 |
| 着陸後の安全化 (Safing) | 着陸後の残留エネルギー(推進剤・高圧・火工品)を無力化すること。 | 遠隔ベント手順・FTS無力化手順を含む安全化手順書(Safing Procedure)の提出。 | RLV-102 大気圏再突入安全標準 GS-104 地上ハザード解析標準 |
| アプローチ統制 | 安全化が完了するまで人員の接近を物理的・運用的に阻止すること。 | Safing Complete宣言基準、安全隔離半径の算出根拠、および回収要員のアプローチ開始条件の提出。 | RLV-101 着陸リスク評価標準 RLV-102 大気圏再突入安全標準 OPS-106 警戒区域監視・クリアランス判定 |
| 洋上回収・ プラットフォーム | 洋上回収時の無人化と支援船の安全な隔離を確保すること。 | 回収プラットフォーム運用計画・支援船退避距離・移乗安全基準・EEZ調整完了証明の提出。 | RLV-103 洋上回収プラットフォーム安全基準 |